漫画家用のGペンを補修に使ってみた

小さい点、細い線

 

今回は補修をやる人が恐らく必ず突き当たる課題のひとつ

「いかに小さい点、細い線を連続して筆で描くか」

ということをテーマに書いていこうと思います。

その前にまず・・・

①なぜ小さい点や細い線を描く必要があるのか?

②なぜ連続して描けないのか?

 

について改めて考えてみることにします。

①については、補修はとても細かい作業のため、木目の再現をする場合に大きい点や太い線では表現が粗すぎるからという事が言えると思います。

つまり、大きな点や太い線だと全体に対する一つの点や線の影響が強すぎる、という事です。この部分は特に仕上げの終盤の微調整の段階でより顕著になります。

②については、筆で描く以上塗料を毛に含ませなければならない為、必ず筆の乾きの時がやって来る、という事です。

そして補修で使う塗料は、水性塗料等と比べて揮発がとても早い為、細やかな表現を出来る状態、というのは

塗料を筆に含み→ウェス等で余分な塗料を取り除き→筆先を整え→描く→そして乾く

その間にほんの一瞬現れる刹那の筆先のベストコンディションな訳です。

 

だが

 

私達には時間がありません。著名な画家や書道家のように、時間の許す限りこだわりを追求出来る訳ではなく、あくまで最短である程度のOKレベルに持っていく事が要求されます。

そうして時間に追われ焦った結果、狙いよりも太い線や大きい点をうっかり描いてしまい、今まで積み上げたものを台無しにしてしまうという恐怖のスパイラルに突入する訳です。

3歩進んで5歩下がる現象ですね。時には100歩くらい・・・

以上のことから、小さい点や、細い線を筆先を毎回整えたり、塗料の乾きをあまり気にすることなく描けないものだろうか、という事を生業として補修をする人が考えるのは自然な流れだと思います。

それならペン?

 

次に考えた事は、ペンタイプの物を使う、という事でした。

例えばMOHAWKのブラッシュペンなどはいろんな色があり、基本的には常にいい状態で描く事が出来るので実際愛用していました。

が、細かい事を言えば、やはり微妙にその日補修している物とは色味が違ったりすることもあるし、何よりドンピシャで出来ている色が手元にあるのにわざわざ既製品の(厳密には)合っていない色の物で対応するってどうなの?という意識がありました。

どこでも買える物でもないし、全色揃えるのも値が張る・・・

ここまで考えた結果、自分が求めているのは

・筆のように毛の状態を気にすることなく

・筆のようにすぐに乾いてしまって何度も塗料を含ませる必要がなく

・ペンのように既存の色ではなく、あくまで自分の作った色で

・尚且つ安価で、維持が容易で

・長い時間、描くことだけに集中できるモノ

だということに気が付きました。

気が付いたものの、なかなかそんな都合の良い物が見つかる筈もなく

手当たり次第に色んな物を試すも、あれでもないこれでもないと半ば諦めながら結局いつも通りの筆を使って仕事をすること数年・・・

 

しかし!

 

転機はいつだって想像もしない所からやって来るものです・・・

人類の歴史、それはジャンルからの部分的借用の連続である事を皆さんはご存知でしょうか?

あるモノが、開発された時に使われる事を想定していたジャンルとは別の所で、誰かによって新たな使い方が発見され、それがやがて市民権を得て、気が付けば普及していくという事はこれまでの歴史で何度も起こってきました。

その日、私はふとした衝動から机に紙を広げてイラストを描いていました。そうして鉛筆によるラフスケッチを終えて、ある事が気になりました。

 

「そういえば、漫画家ってここからどうするんだろうか?」

 

そう思い調べてみたところ、どうやら”Gペン”そして”丸ペン”という物を使うらしい、という情報を得ました。

いわゆるペン入れという作業に使われる物との事。

「とりあえず買ってみよう。」

そう思いポチッとボタンを押しまして(  ・∇・)/凸

後日、届いたものがこちら。

Gペン   

ペン軸にペン先2種✒︎

早速ペン軸にペン先を装着してみます。

 

Gペン

ギュッとな

こういうペンは”付けペン”というカテゴリーのものらしく、興味が湧いたので付けペンについて調べると、元々は英字を書くために使われたGペン、地図の等高線や、図鑑などの昆虫の絵を描くために使われた丸ペン、他にはガラスペン(シルクロードっぽくてかっこいい)、羽ペン(貴族っぽくてかっこいい)等々、普段特別気にはしていなかったけれど、映画の中などで目にした事があるような気がする物が多数ありました。

・・・そしてなにより、Gペンや丸ペンも元々は漫画の為にあった物ではなく、たまたま漫画を描く条件を満たしていた他ジャンルからの流用品だったのです!

先端部は先割れの構造になっていて、対象物にペン先が押し当てられ、そこに力が加わる事により先端の先割れが少しずつ開いて、そこにインクが送り込まれるという仕組みになっているようです。

毛細管現象という原理によるものだそうです。

私はなんとなく、ダムが放水する時の小ちゃいバージョンみたいだなこれは、と思いました。

 

Gペン

当ててから・・・

Gペン

力をかけると開く

 

 

いざ試用

 

さっそく描いてみます。

ほう・・・

悪くない・・・いや、むしろけっこういい

ちょっと癖はあるけど、慣れるとかなり細かい点や線が描ける!

試しに近くにあった木目の細かい床材に木目を書き込んでみると、線幅や点の大きさもピッタリ!
ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ!!!
そう、まさに他ジャンルからの部分的借用が成立した瞬間でした。

以下はこれにすっかり気を良くした私が、色々試してみた結果です。

まず、いつもの筆で点打ち・・・

筆で点

続いてGペンで点打ち・・・

Gペン 点

比較すると・・・

筆とGペンでの点打ち

左が筆、右がGペンになります。

どちらも条件は同じで、一度の塗料含みでどこまで点が打てるかを比較してみました。

おおかた倍以上は軽く描けているでしょうか。
作業効率は上がりそうな気がします。

あと、決定的に違うのは筆の場合はかなり気を付けながらでないとこのサイズの
点が打てないのに対して、Gペンの場合はどちらかというとシャチハタでも押すような感覚でトントントンッと描く事が出来ました。

小さい点なので、床やアルミの細い線キズ等にも使えました。
筆のように線傷の中だけを塗ろうとするもはみ出してしまい、それによってかえって目立つという事がなく、傷の中だけに着色が出来、最小限の範囲で収める事ができます。
塗るというよりは針で突いて色を置く、あるいは流し込むような感覚です。
そういう意味ではタッチアップの地平を今まで以上に切り開くことが出来ると感じました。

他に例外での使用例としては
<エンボスのある材のちょっとしたエンボス再現。これまではカッターナイフ等で線を作ったりしていましたが少々不自然な感じ・・・それがもう少し繊細に木目っぽいエンボスが作れる場面もあります。(柔らかいパテに対しては特に有効)
クロス補修の際のエンボス加工にも使えました。(埋めたコーキングやソフトワックス等に対して)

そして石系の模様を描くのには特に向いていると感じました。
黒い粒々が無数にあるタイルなど・・・
相手が硬いので気兼ねなく描けます。

点を描く場合は、押し付けて塗料を押し出すような形になるため、当て方や角度、力加減には注意する必要はありますが、コツを掴んで気を付ければ薄く充填したハードワックスの上にでも傷をつけずに微細な点を描く事が出来ました。

ジェルやポリパテ等はまったく問題なしです。
※モノが硬くても、サンディングシーラーを吹いている場合、塗膜が柔らかい為ちょっと微妙

——–解析終了———

感想とまとめ

・デメリット
特に線を描く場合に顕著だったのですが、構造上、金属製の先端で対象物を引っ掻くような形になるので、素材によっては傷を付けてしまう場合がある、という事です。
(細い線自体は描けるのだけど・・・無念・・・)
・メリット
まず、細かい点がラクに打てる事。
そして金属製のため筆のように傷む事がほぼなく、いつ使っても新品の時と同等のパフォーマンスを発揮出来る。
安価である。
そして最大のメリットは、1度塗料を含ませれば筆と比較して結構な長時間連続して点を打ち続ける事が出来る点。
①筆に塗料を含ませて
②余分な塗料を取り
③ウェスで先を整えて
④やっと描ける!
⑤と思いきやすぐに乾燥・・・
再び①に戻るというあの煩わしさから少なからず解放される。
筆と比較して塗料の溜め方、送り込み方の違い、そして形状の違いにより細かい点を打ち続けることが出来る。

おわりに

いかがでしたか?
少しコツが要るため描き手を選ぶツールかもしれませんが、選択肢のひとつとして、持っておいたら助かる場面がきっとある道具だと思います。
それから使い始めにはヘラのように1000番くらいの耐水ペーパー等で少し角を落としてあげるとキズをつけずよりスムーズに描きやすかったです。
場面は選ぶかもしれませんが、時短ツールとして使えるかもしれない、という紹介でした。
ここまで読んで頂きありがとうございました((・ω・)_ _))
皆さんの日々の仕事の一助となれば幸いです!
     

←ブログ一覧へ戻る

←ホームへ戻る